ボストンの語学学校から、Cypress Collegeそして、UC Berkeleyへ進学し心理学を専攻して学士号を取って帰国するまでのエピソード

武器技(何故武器を稽古するのか)

合気道で使う武器
武器には大きく分けて剣と杖が有ります。私は、剣よりも杖の理合いで合気道の体術を稽古する方がしっくりきます。


杖を表現した有名な比喩が、 『突けば槍 払えば薙刀 持たば太刀 杖はかくにも 外れざりけり』です。
合気道と杖道の共通点を以下に揚げます。

  • 変幻自在。
  • 対複数の闘い。
  • 相手を殺さない。
  • 武器技と体術との共通点
    武器技を稽古する事と体術を稽古する事とは、武器を意のままに動かすのか、稽古相手を意のままに動かすかの違いでしかありません。但し、動き回る人間を物の様に意のままに動かすには、相手の重心を取り、中心を抑える必要が有ります。それが出来れば、相手の体を意のままに動かすことが可能になります。それには、相手の体が伸びきっていて、相手の体が一本の固い木の棒と同じ状態に成っていることが必要です。泥酔した人間を起き上がらせるのは至難の業ですが、それは、酔っぱらいの体がグニャグニャと柔らかく重心が安定していないからです。

    合気道の稽古するなら、武器技は絶対に練習しておく必要が有ると私は考えています。動かない木の棒を自在にコントロールすることさえできなければ、動く人間の相手を自在にコントロールすることは不可能です。

    先端を素早く動かす
    武器で相手を攻撃する時は、武器の先端を使います。つまり先端が相手に当たる部分です。手の延長線上にある武器の先端ですから、自分から一番遠い部分となります。その先端部とは、徒手空拳の体術では、手や足になりますし、相手と一体に成っていれば、相手の体の一部分となります。自分が中心となり、円の動きで遠心力を使うので、自分の体を大きく動かす必要はありません。自身の体から出る回転力を武器や相手に伝えて、それらの先端がしなるくらいの勢いを伝えます。

    例えば、一教をかける場合に相手の手首を持ち、手首の位置は変えずに相手の肩だけ回すことも可能です。その円運動を相手の肩から相手の頭に伝えることで相手の頭を揺さぶる事も出来ます。

    円の回転を伝えるのに注意したいことは、直線で始めて円運動に入ろうとすると、相手の力にぶつかってしまうという事です。目指す方向とは逆方向で初めて小さな弧を描けば狙っていた方向に円運動することが出来ます。

    腕に力が入っていると、動作が遅くなる
    腕に余計な力が入っていると早く武器を振る事は出来なくなります。腕力に頼って重い武器を振る事は出来ても、早くは振れません。武器を素早く振るためには腕は脱力して使うのが基本です。これは体術でも同様です。

    武器技と体術との共通点(掴まれている方が有利)
    掴まれている方が内側を回れます。例えば、腕を掴まれているとき、腕の中心を軸にして回せば、掴まれている腕が車軸となり、掴んている腕がタイヤ部分になり振り回されます。その掴んでいる人の体はさらに大きく振り回されることになります。肩を掴まれているときも考え方は同様です。体軸を中心として回転すれば、自身の体が車軸となり、肩を掴んでいる人が大きく振り回されることになります。

    この時大事なのは、相手から掴まれている部分を意識しすぎて、その部分を動かそうとするとうまくいかないということです。掴まれている部分は忘れて、回転する事に集中しなくてはなりません。特に腕の回転は掴まれた瞬間に相手のバランスを崩すことが出来ます。下記の肩抜きと組み合わせて使う事で絶大な効果が出ます。

    回転のさせ方は杖の突きの時と同様です。腕の回転力を杖に伝えることで、突きの威力が増すように、杖の突きを繰り返し練習することで、腕の回転力が相手に伝わる様になります。

    肩を抜く
    自分と相手の力が均衡していて、相手の圧力が強く、どうしても前に出れない時や、転換させてもらえない時は、前に出たり、転換するだけのスペースが無いときが多いものです。そのスペースを腕を伸ばしたまま、肩を抜くことで稼ぎ、相手が前につんのめった時に、肩が回転しながら元の状態に戻る力を利用して、前に出たり、転換することが出来ます。だいたい、前に出る時は、肩を内側(腹側)に抜くことが多いようです。転換するときは、直前に自分の体の外側(背中側)に抜く事が多いようです。正面打ち一教表・裏や、相半身と逆半身の片手取りで試すと面白いと思います。この時大切なのは、しっかり相手に押してもらう事で、その力を利用して肩の力を抜き動くことであるようです。

    この時、相手は、私からの力の方向性を感知する事が出来なくて、対抗することが出来なくなります。相手の体は浮かされることが多いです。

    肩を抜くという事を別の表現で表すと、肩甲骨を回すという言い方になります。 背中の両方の肩甲骨で物を掴むようなイメージで教えている道場も有ります。肩甲骨が柔らかく回るようになると、肩取りの技も肩をうまく使って効果的に技が効く様になります。

    その他にも、息を吐きながら、腰のあたりを抜くことも出来ますし、膝を抜くことも出来ます。

    肘を抜く
    肩を抜くように、肘を抜くことを出来ます。天地投げでその効果を良く実感できます。肘から先の二の腕を緩めて使う事で、体幹の力が、肘まで伝わった後、遅れて二の腕に伝わります。二の腕は回転しながら相手に向かっていきます。相手は、私の体が相手の方向に進んでも、二の腕部は、逆に後方へ動くので、一瞬力を弱めます。その間に相手の懐に私の体が入り、遅れて相手の体を攻めるように私の二の腕が相手の体を持ち上げます。

    その他の技でも、ひじから先は力を入れない方が技が良く効くようです。

    武器技と体術との共通点(相手の足を攻める)
    武器技、特に杖では、打つ側の反対の端がどのように動いているかが重要です。何故なら、杖の真ん中を支点として、シーソーの様に片側を上げるとこで、もう一方を下げることが出来ますし、その逆に片側を急激に下げることで、もう一方を撥ね上げることが出来るからです。杖の両端を下げてもあまり力強く打ちつけることは出来ません。

    ここで、杖を人間と置き換えて考えてみます。例えば、相手の頭を地面に叩き付けたいとします。相手の頭を地に下げる事ばかり考えていると、相手の足も地に着いて威力が無いです。逆に、相手の足を天に上げることを考えてみたらどうでしょう。もしも四方投げや入り身投げが決まる時、相手の足が上がっていれば、かなりの威力です。相手の丹田辺りを中心にして、足と頭の位置を入れ替えることも、相手の体が伸びきって一軸になっていれば可能です。何気ない一教等の技でも、相手の腕を通して、相手の中心を掴み、相手の足を跳ね上げさせる意識でおこなうとかなりきつい技になります。

    しかし、勿論、稽古相手を痛めつけようと気持ちは邪であり、そこには隙が生じます。合気道では、格闘技的に正しいことでもやってはいけないことが有りますし、出来るからといって、なんでもやって良いというこではありません。

    杖の虚実
    杖で攻撃する場合は、杖の両端で攻撃が出来ます。一方の端をAとし、もう片方の端をBとすると、Aで攻撃した後、逆の端Bで攻撃できます。攻撃される方は、A端で攻撃されるか、B端で攻撃されるか事前にはわかりません。例えば、A端を相手の前に差し出し、A端で攻撃すると見せかけて、相手の意識がA端に集中したところで、杖をクルリと転じ、B端で攻撃することが可能です。この時、A端は囮であり、餌であり、虚です。逆に実際に攻撃に使われるB端が実であると言えます。杖を持って格闘する時は、A端とB端が虚実虚実を繰り返し、転々と休まず、入れ替わり続けます。

    実は体術でも同じことが言えます。つまり半身になって構えた場合、相手の前に置いた手が虚、後ろの手が実となることが多いのです。虚で誘い、実で打ちます。片手取の場合などは、掴まれている手が虚である。虚の手は相手の外側に向かう事が多いです。虚の手が相手には実の手に見えているが、掴まれたとき、自身の体幹は相手の正面にはありません。ただ実の手の方が相手の正面にあって相手に当身を入れたりします。勿論、一つの技をかける場合、左右の手で、虚実は何度も入れ替わります。実際に働いている手が実ですが、本当は両方の手が一体となり、相手に働きかけています。たいていの合気道技は、片手だけでも効力が有るように出来ています。しかし、両方の手が強調して働くことで威力や効果が数倍になります。片手がおろそかになっていると、効果が薄いのは、杖の稽古をしてこそ理解できることです。

    両手を使う
    剣も杖も両手持ちです。武器を稽古すると、両手を使う事の大切さが分かります。

    まず、左右を意識することで、体のバランスが取れます。(大きくダイナミックに動くことが出来る。)それから相手に体の一部を掴まれた場合などに、意識がその場所に集中しすぎるのを避けることが出来ます。例えば、右手を持たれたときに、右手にばかり意識が集中し、右手を何とかしようとすると、体のバランスが崩れ、右手・右半身の筋力に頼った動きしかできなくなります。ここで敢えて左手を意識することで、体全体を使った力強い動きが出来るようになります。相手の存在を無視して、自分本位で動けるようになります。

    両手を使う事は合気道の稽古中いつでも意識しておくべきことであると私は考えています。これは、受け身を取る時にも絶対に忘れてはいけない事だと思います。例えば、相手の手を掴みに行く場合、私は絶対にもう一方の手を自身の顔の前に置くように心がけています。これは相手から顔面に当身を入れられるのを防ぐためであり、隙が有ればいつでも相手に反撃ができる事を示すためであり、武道を稽古するものとして当然の備えであると考えています。稽古中や普段の生活でも緊張感を持つという自身への戒めでもあります。

    ダイナミックに大きく動く
    空手では突きを放つ時、突きを打つ腕も大事であるが、もう片方の引く腕の重要性が指摘されます。例えば腕を引くスピードがそのまま突きを打つ腕のスピードとなるなどです。野球のピッチングでも、ボールを持っている腕と同じくらいグローブを持っている腕の使い方が重要です。グローブを持っている方の腕が溜めを作るから、投げる方の腕が良くはしる等と言われてます。

    左右の腕や半身を均等に使うという事は、ダイナミックな動きに繋がります。というのも、右手を作用させる場合は、左手がその逆方向に動いて、全身のバランスを保っていることが多いからです。空手の突きはその最たるものです。腰の動きが左右の肩に伝わり、右の肩が前に出て、右腕が伸ばされ突きを放つ時、左肩は後方へ向かい左腕は縮んでいます。これは、シーソーの様に動く杖と非常によく似ています。

    野球のピッチングではどうでしょう。投手が投げる前はグローブを持っている手を前にして半身で構え、投げ終わる時は、ボールを持っていた腕が前に出ています。但し、この時、上体が前に出て、下半身が後ろで、特に足が後方へ投げ出されているように見えます。これは、上半身がより効果を発揮できるように、下半身が上半身と反対側に動き、腰を中心にしてバランスを取っているからです。

    合気道でも同様の考えで動かなければならないと私は考えています。入り身投げを例にとります。最後に投げる場合、片側の腕を上げ、体全体で入り身をしながら投げるわけですが、反対側の半身を素早く引くイメージが有ると、相手の体を、より巻き込んで投げることが出来、投げた後、バランスが崩れません。(右腕を上げて、相手を入り身投げする時は、左足を後ろに下げるようなイメージも可。)転換をするときも、半身半身を入れ替える時に、前に出る側の半身と、後ろに成る側の半身をバランスよく進退させることで、より早く、安定して半身半身を入れ替えることが出来ます。

    つまり、作用させていないと思われる方が大切であり、両極を作用させようとするならば、ダイナミックに動かなければならない(動かさなければならない)という事です。

    両極
    今まで、杖の両端、そして自身の左右・上下の半身が両極であるという考えを書いてきました。では、合気道を稽古する場合、他に両極となる部分は無いのでしょうか?

    ミクロな視点で考えていくと、肘と手、手の平の親指と小指、足の裏の親指の付け根と踵などは絶対にそうです。

    マクロに考えていくと、武器を稽古する場合、それは、自分自身が一端であると仮定すると、武器がもうひとつの端であることになります。さらに、体術を稽古する場合それは、自分が一極であり、相手がもう一方の極であるということになります。

    開祖は、合気道の技を通して「和合」や「万有愛護」を説かれました。自身が一方の極となり、相手が他方の極となる場を持つことで、和合して相手を活かしながら導くことも可能になると思います。

    更に考えを発展させていくと、自分とある一定の空間、自分自身と地球、自分自身と宇宙という両極の関係で合気道の動きが出来てくるはずです。

    ページの更新について

    諸々の理由で、最新ではないページが表示されることが有ります。お手数ですが時々、それぞれのページで「F5キー」を押してページを更新してください。

    Category Menu

    最初に

    米国留学

    inserted by FC2 system