ボストンの語学学校から、ボストンの語学学校から、Cypress Collegeそして、UC Berkeleyへ進学し心理学を専攻して学士号を取って帰国するまでのエピソード

私にとっての心理学とは

 心理学では、人間を含めた動物の行動様式や心的活動の法則を勉強します。私の考えでは、芸術、建造物、言語、経済活動、事故、犯罪、倫理観、法律、制度、宗教などは人間の活動による産物で、心的な衝動や人間の本能に起因するものです。よって心理学の分野は、動物心理学、人格心理学、認知心理学、文化心理学、精神病理学、社会心理学、犯罪心理学、教育心理学など多岐に渡り、人間心理を知ることは、この世の中の現象のほとんど全てについての法則を知る事につながると考えています。私は心理学を通して時代や文化を越えた人間の性格、行動、記憶、学習に関する特性をある程度理解することが出来ましたし、人生に対する様々な問いに対する自分なりの答えを見つけましたので、その答えをある程度指針にして生活しています。

心理学の限界

 ただ、どの学問でもそうですが、心理学が一つの事象をある程度の確率で証明できたとしても、その答えに付随していくつもの新たな疑問が生まれます。結局どこまで心理学が発達しても人間が知っていることよりも解らないことの方が多いのです。

 そして、学問には100%完璧なものは無いと認識することも大切だと思います。

人は人生哲学を持って生きている

 人生に対する様々な問いに対する自分なりの答えというのは、結局、人間観や人生観のような人生哲学であると思います。これは、正解など無いもので、突き詰めると、誰でもがそれぞれの人生における経験や学習から答えを導き出す幻想であると思います。人間である以上、心理学を体系的に勉強をしたことが有るから、優れた人間観や人生観を持っているとは言い切れないとおもいます。ただし、少なくとも心理学を体系的に勉強した人たち、特に臨床心理学を勉強した人たちには、他人の人生哲学が導き出された過程を推測することや、その考え方を尊重すること、そして人としての違いを人間の多様性として是認することを教えられます。そのような考え方が身につけば、心理学を学ぶメリットとしてギスギスしがちな人間関係の中で幾分かの心の余裕が持てるようになると思います。怒りを感じることは格段に少なくなるはずです。

Stephen Hinshaw教授

 私が一番素晴らしいと思った授業は、当時心理学部の学部長をされていたStephen Hinshaw教授のPsychology 131 Developmental Psychopathologyです。このクラスでは主に子供たちの精神病理を学びましたが、このクラスの中でHinshaw教授は自身の家族の事を語られました。
 Hinshaw教授は双極性障害(躁鬱病)の起こりやすい家系に生まれました。 精神疾患というのは、遺伝的要因と環境的要因の複合的影響で発症するとされていますが、双極性障害は他の精神疾患と比較して、遺伝的要因の影響が大きいことが知られています。さらに、自殺による死亡率が非常に高い疾患として知られています。 教授も御父上をはじめご家族の多くが双極性障害で苦しまれてきました。教授自身もいつ発症するか分からない恐怖と隣り合わせで子供時代を過ごされていたそうです。そして教授は、そのメカニズムを学ぶため心理学を学ばれました。現在、2012年春学期の教授のPsychology 131の講義をPodcastで聞くことが出来ます。Lecture19でご家族の事を話されています。とても素晴らしい講義です。
 生物の性格や身体は同じ種でもそれぞれ違い、その違いは、環境が大きく変化した場合、その種の一部の個体だけでも生き残り、遺伝子を後世へとつなげていくためだと考えらています。例えば、ほとんどの哺乳類に見られる免疫システムで主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と呼ばれる巨大な遺伝子群があり、自己と非自己を判別し、免疫応答を決定する最も重要な機構です。ヒトの場合、この遺伝子群が発現する蛋白分子は、最も強い個体間での多型性を示すことが知られています。その多様性から、親子鑑定や本人確認のために利用される遺伝子の部位です。敏感すぎる免疫系は、花粉症や食物アレルギーなどの症状として現れますが、鈍感な免疫系では、病原体に対する抵抗力が著しく弱くなってしまいます。おそらく新種の病原体が現れた場合、敏感な免疫系を持っている人達の方が生き残る確率が高いのではないでしょうか?
 多様な人間の心理的特徴も、その人が置かれた環境に適応出来るか否かで、好意的に思われたり、嫌悪感を持って受け入れられたりするもので、時代や文化、自然環境によりどのような心理的特徴の人が好まれるかは変わってきます。アメリカという国は比較的、多様性に寛容な国であり(最近は排他的になりつつあっても)、人種や民族、性別、障害の有無などの違いを自由・権利・平等などの名のもとに何とか乗り越えようとしている国だと思います。特に教育機関は事あるごとにその為の努力をしていると感じます。心理学も例外ではありません。多くの矛盾や葛藤を抱えながらも、アメリカの心理学界は、精神障害をヒトの多様性の帰結であると考え、自由・権利・平等の考えに基づいて対応しようとしていると感じます。Hinshaw教授も精神病理の器質的メカニズムの研究だけではなく、社会的なStigmatization(烙印を押すこと、汚名を着せること)のメカニズムや対応方法の研究でも有名な方です。教授がStigmaについて講演されているビデオをネットで見つけましたので興味のある方は視聴してみてください。

資格

 日本には、認定心理士という資格が有ります。基本的には、4年制の大学で心理学関係を専攻し、卒業した人達が申請できる資格で、2013年1月現在の情報では、海外の大学を卒業した人たちも申請することが出来ます
 日本心理学会のウェブサイトに資格取得に必要な科目と単位が掲載されています。今から海外で心理学関連の勉強をされる方や、その予定が有る方々は、認定心理士取得を視野に入れて、必要な科目と単位を履修されると良いのではないでしょうか。特に、b領域とc領域の心理学研究法と、心理学実験・実習のクラスを履修しておくことをお勧めします。そして、bとc領域の授業のシラバスは絶対に保存しておくことをお勧めします。
 既に大学を卒業された方でも、放送大学のような通信制の大学で不足している科目や単位を補って申請もできるようです。詳しくは日本心理学会に直接問い合わせてください。

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